整骨院は「町のウェルネス拠点」になれるか
柔道整復師が担う、地域医療の一端
―― 開院のきっかけを教えてください。
もともとはまったく違う道を歩んでいました。
大学では工学部で物質工学を専攻していて、物理や化学、数学が得意だったので、そのままの流れで進学したんです。
でも、学んでいくうちに「自分が本当にやりたいことではないな」と感じるようになりました。
その後いったん会社に就職もしましたが、「自分の本当にやりたいことができていない」という違和感がずっとあって、長く続けることができませんでした。
そんな時に思い出したのが、大学時代に打ち込んでいた「少林寺拳法」です。
武道なので、人の体に手を使って「倒す」技を練習するのですが、実はその裏側に「治す」という世界もあるんですね。
合宿の時だけ「整法(せいほう)」という、生体・整体のような時間があって、そこで初めて「人の体を整える」ということに触れました。
それがすごくおもしろくて、「あ、こういうことも自分は好きなんだ」と強く印象に残っていました。
少林寺拳法の先輩には、接骨院の先生や整体師として活躍している方も多くて、話を聞くうちにますます興味がわいてきたんです。
そこから
「接骨院って国家資格だし、健康保険も使える」
「手に職をつけて独立もできる」
「医者ではないけれど、人の体を良くする道を一生続けられる」
と考えるようになって、この世界に飛び込むことを決めました。
専門学校で3年間学んで国家資格(柔道整復師)を取り、開業を前提に整骨院で修行。
「3年くらい働いてから開業」という話で就職したのですが、どうしても自分でやりたくなってしまって、頭を下げて2年で独立させてもらいました。
そこから少しずつ店舗を増やして、今は4店舗まで広がってきた、という流れです。
北斗の拳でいえば…「ケンシロウ」より「トキ」タイプですね。
壊す方ではなく「治す方」に惹かれた、という感じです。
「ウェルネス」という考え方
―― 理念「充実した豊かな暮らしを送ってほしい」は、どんな経験から生まれたのですか?
開業してからも、とにかく勉強が好きで、
いろいろな先生のところに学びに行ったり、東京・大阪のセミナーに毎月のように通っていました。
その中で出会ったのが、「ウェルネス」という考え方です。
英語で「健康」というと普通は“Health(ヘルス)”ですが、
“Wel lness(ウェルネス)”にはもう少し広い意味があります。
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病気でない状態、だけではなく
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趣味・美容・リラクゼーション・ファッションなど
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「自分らしく、心身ともに良い状態で生きていくこと」全体
を含めて「ウェルネス」と呼ぶ、という考え方です。
人によって「ちょうどいい健康の作り方」は違います。
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鍼灸が合う人
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整体が合う人
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トレーニングが好きな人
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美容やファッションに気をつかうことで満たされる人 …など
私は「筋肉・骨格の専門家」ではありますが、
体だけを切り離すのではなく、
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栄養
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運動
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睡眠
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筋肉・骨格
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メンタル
この5つをトータルで整えることで、その人の生活と人生が豊かになるようにサポートしたい、と思うようになりました。
「どこへ行っても治らない人を1発で治す」という尖った方向も、もちろん価値があります。
でも私は、
「ごく普通の人たちが、自分に合った方法で、ほどよく良い状態でいられる」
そういう場所を作りたい、と思って、この一文に理念をまとめました。
「充実した豊かな暮らしを送ってほしい」
という言葉には、そういった思いが込められています。
柔道整復師は「ゼネラリスト」であるべき
―― スタッフ教育や技術の考え方について教えてください。
柔道整復師は、本来「ゼネラリスト」であるべきだと思っています。
痛みは「体のどこかの損傷」だけで起きているわけではなく、
その背景には、生活習慣や仕事、人間関係、社会とのつながりなど、いろいろな要素があります。
なので、接骨院の先生は
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筋肉・骨格のこと
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内科的な病気の可能性
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炎症・感染症などの知識
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必要に応じて病院をすすめる判断
などを、ある程度広く押さえておく必要があると思っています。
実際、柔道整復師の国家試験の中には「保険会社とのやり取り」や「交通事故の法的な知識」は1秒も出てきません。
でも現場に出ると、そのあたりの知識がないと患者さんを守れない場面も多いんですね。
だから私は、
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カイロプラクティック
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オステオパシー
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姿勢分析
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3点バランス保持療法(インソール)
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交通事故・保険に関する勉強
こういったものも積極的に学び、現場で活かすようにしています。
「ほぐすだけ」「保険を使うだけ」「マッサージ屋さんの延長」ではなく、
「ゼネラリストとして、広い視点で患者さんの健康に関わる」
そこを大事にしている整骨院です。
20年間、変わらず大切にしていること
―― 開院して何年目ですか?大切にしていることは何でしょう。
どんぐり整骨院は、2024年で開院20周年を迎えました。
開院当初から変わらず大切にしていることは、
「目の前の患者さんの人生をちゃんと見ること」 です。
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この人は何に困っているのか
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何ができなくてつらいのか
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どうなったら「良くなった」と言えるのか
痛みの原因を分析して、技術を使って良くしていくのはもちろんですが、
その裏側には、
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できなくなった趣味
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仕事の不安
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家事や育児の負担
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人間関係のストレス
などが必ずあります。
ただ「痛みを取る」だけではなく、
「その人の生活や人生が、少しでも前向きに戻っていくように」
というところまで含めて関わることを、大事にしてきました。
流れ作業ではなく、
一人ひとりとちゃんと向き合って、その人に合わせた提案をする。
これが20年たっても変わらない、どんぐり整骨院の基本スタンスです。
整骨院業界への問題意識
―― 整骨院業界全体について、どのように見ていますか?
今、整骨院の数はコンビニ大手3社(セブン・ローソン・ファミマ)より多いと言われています。
歯科・美容室ほどではないですが、それに次ぐくらいの数です。
その結果、業界としてはかなり二極化が進んでいると感じています。
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何十店舗も展開する「大手チェーン」
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1人または夫婦でギリギリやっている小規模院
この2つの極端な形が増え、その中間が少なくなっています。
大手は「サービス業寄り」「自費メニュー寄り」に振れすぎていて、
一方で小規模院は、保険に頼り切らないとやっていけない…という現実があります。
本来、柔道整復師は「国家資格」であり、
健康保険という「社会資源」を扱える立場です。
それなのに、自分たちの価値を十分に活かせていないケースが多いように感じています。
私は、整骨院はもっと
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行政や医療、介護との連携
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防災訓練での応急手当指導
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学校での姿勢・体のチェック
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地域スポーツのサポート
といった「公共に近いフィールド」で活躍していくべきだと思っています。
無資格の整体さんにはできない領域で、
「地域医療の一端を担う存在」 として、柔道整復師が価値を発揮できるような未来を目指しています。
そのために、行政や議員さんとの連携も含めて、少しずつ動き始めているところです。
地域とのつながり・社会での役割
―― 地域との関わりで意識していることは?
どんぐり整骨院は「地域になくてはならない健康づくりの場」でありたいと思っています。
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痛みを取る場所
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ケガを治す場所
で終わるのではなく、
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子どもの成長期サポート(オスグッド・スポーツ障害など)
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介護予防としての高齢者のカラダづくり
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現役世代のメンテナンス
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交通事故後のケア
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産後のお母さんのサポート
こういった部分まで含めて、「地域全体のウェルネス」に関わっていくことを意識しています。
そのために、
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地域包括支援センター
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医療機関
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学校
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商店会・町内会
など、いろいろな場に顔を出して、
「困ったときに真っ先に思い出してもらえる整骨院」
を目指して活動しています。
どんぐり整骨院に来てほしい人・伝えたいこと
―― 来院される方に、どんな気持ちで帰ってほしいですか?
一言でいうと、
「ここに来れば大丈夫だ」
「何かあったら、またここに相談しよう」
そう思って、少し明るい気持ちで帰っていただきたいです。
「自分の体はどうなっているんだろう」「この痛みは一生続くのかな」
そんな不安を抱えて来られる方が多いので、
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今、体はどういう状態なのか
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どこに負担がかかって、痛みが出ているのか
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これからどうしていけばいいのか
を、できるだけ分かりやすくお伝えするようにしています。
研究肌な性格なので、「なぜ痛みが出ているのか」が自分の中で腑に落ちないと治療したくないタイプなんです(笑)。
その分、原因を追究して、できるだけ納得感のある説明と施術を心がけています。
整骨院というと、まだまだ
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「どんな時に行けばいいのかわからない」
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「そもそも選択肢に入っていない」
という人が多いと思います。
だからこそ、これからも地域に出ていって、
「体のことで困ったときに、ふつうに選択肢に入る存在」
として、整骨院の価値を広げていけたらと思っています。